【考察】『ハイパーインフレーション』で多くの人が気づいていないこと② 武器編 〜グレシャムの銃は実在する〜

元々、1話ずつシーンごとに考察・解説するつもりだったのですが、長々と纏まりがないのでやめました。

↓前回

mugrumat.hatenablog.com

 

さて、第二回は武器についてです。『ハイフレ』にはたくさん武器が出てきますよね?

 

...なんなら1話の1ページ目から。

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)1話 より

1話、カラーの見開きは飛ばして1ページ目、帝国側の銃に対しガブール側の矢で応戦しようとするシーンです。

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)1話 より

なんだこれ??

普通、矢は弓で引くものです。でも、ガブール人は棒状のものに引っ掛けて投げているんですよ。

これはアトラトルと言って、弓が誕生する前からある投矢器らしいのです。氷河期のころは世界的に用いられていたようですが、忘れ去られ、一番新しくはアステカ文明で用いられたのみだそうです。

ja.wikipedia.org

ためになったね〜

いえ、今回話したいのはこっちじゃなくて、

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)1話 より

こっち… 銃弾の方なんですよね。

 

銃弾なのに球状で、しかもちょっと変な形をしています。

 

作画が適当なだけなんじゃないの?
ファンタジーだから多少はね?

違います。

今のところは、この漫画の知識や描写には嘘やハッタリがないと、断言できます。

 

この銃はイギリス1836年に製造開始されたブランズウィックと専用の弾丸です。

 

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Firearms History, Technology & Development: Rifling: Brunswick Rifle

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この銃弾の形状は銃口から銃弾を入れ、銃の溝にぴったりと合わせるためのもので、銃身の下に付いている棒、㮶杖(かるか)で奥に押し込みます。すると銃弾が発射される時に回転するようになることで、安定性が増すということで、長らく使われていたそうです。

へぇ〜。で?だから? 

場面が移り変わって、7年後の帝国の植民地。また銃が登場します

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)1話 より

かなりしっかりと描かれているので分かると思うのですが、銃が変わっています!

これはおそらくイギリス1853年に製造開始されたエンフィールド銃でしょう。丸い銃弾よりも優れたミニエー弾という銃弾を使用しています。

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ここで重要なのは、この2種類の銃は年代を考えても矛盾がなく描写されていることです。7年も経っていますから、銃が進化するのも当然と言うことですね。この1話の8ページだけで、時代考証がしっかりしていて、19世紀半ばだと言えるのです。

 

グレシャムの手下たち

実はこの銃はグレシャムの手下たちも皆使っています。これ以降ほとんどはこの銃です。作中では最新鋭の銃なんじゃないかと思います。

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)6話 より

この銃も前装式なので、銃口から正しく弾を込める描写が時々出てきます。このコマはめちゃくちゃ面白いので覚えている人も多いと思いますが、背景にリアルな描写があったことに気付いている人は少ないんじゃないかと思います。

 

先っぽになんかついてるけど、同じ銃なの?

 

と思った人もいると思います。これは近接戦闘のための銃剣用パーツになります。

 

なんなら漫画内に書いてあります

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)6話 より

「白兵戦の用意だ!!」と言われたので、言われた通りに右のグレシャムの手下が付けてますね(笑)。

 

グレシャムの銃

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)10話 より

ペッパーボックスピストルがわからない人が多いと思うので、貼っておきます。(当然自分も知らなかったのですが。)

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で、これが実在したグレシャムのペッパーボックスピストル

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Firearms History, Technology & Development: Revolvers: Pepper-Box Revolver

まさかのグレシャムの銃より銃口が多い(笑)

連射できる分、装填にもかなり時間がかかるので微妙だったみたいです。

 


 

最後に
自分はミリタリーオタクではないので、少々の間違いは許して欲しいです。

↓続き

mugrumat.hatenablog.com

 

絶対に買うなよ!!
我慢できない!! もう買います!!

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住吉九 『ハイパーインフレーション』(集英社)5話 より

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