【考察】『ハイパーインフレーション』で多くの人が気づいていないこと③ 贋金編 〜ルークの金貨の作り方は間違っている!?〜
第三回は贋金についてです。
↓前回
と言っても紙幣の方ではなく、金貨の方です。
ルークが最初に作る贋金は紙幣ではなく金貨でした。
純度の低い金貨を作る方法は本人が解説してくれています。
- 銅と銀と金を溶かし合わせて、カナヅチで打ちます。この加工方法を鍛造と言います。成形と同時に、不純物を取り除くことができます。
-
できた合金を「酸性の植物液」に浸けます。おそらくレモンなどのクエン酸を含む果実の液でしょう。酸化した10円玉にレモン汁をかけると綺麗になる、というのと同じことをしているのだと思います。
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最後に「緑礬(りょくばん)という鉱物と塩水を混ぜたものをヤケドの痕に塗ってやろう」と言い、それにより表面の銅と銀が取り除かれ金だけが残るとしています。
問題は最後の部分ですね。緑礬とは一体なんでしょうか?
化学の話になりますが、硫酸鉄(II)の7水和物(FeSO4・7H2O)のようですね。
水和物は結晶として存在する時に水分子が入っているよ、という程度の意味です。
ここで少し化学がわかる人は?が出ると思います。
硫酸鉄(II)と塩水(塩化ナトリウム)を混ぜる??
硫酸鉄も塩化ナトリウムも中性なので化学反応しないと思いますし、もし反応しても銅と銀を溶かすようなものが生まれるとは思えません。
逆に、銅と銀を溶かすようなものといえば... 硫酸(H2SO4)ですね。
高校化学でイオン化傾向を学ぶ時に、金までも溶かすのが王水、銅・水銀・銀まで溶かすのが硝酸や硫酸、というのを習うと思います。(覚えているわけがない)
硫酸の場合は濃度と温度を高くしなければ反応しないみたいですが。
ならば硫酸鉄から硫酸が得られれば、あながち間違いとも言えないのではないでしょうか?
すると
その昔は硫酸をつくるのに,緑礬を乾留して得る(あとにはベンガラが残る)のが定法でした
との記述が。
乾留とは、こんな感じのやつです。
これで気化した硫酸を集めるってのが正しい方法か!じゃあ正しくは
- 「緑礬(りょくばん)という鉱物を乾留して得られる硫酸をヤケドの痕に塗ってやろう」「表面の銅と銀が取り除かれ 金だけが表面に残り...」
ここまで来て気づきました。
そもそも硫酸を塗っても銅と銀が溶けるのと同時に金も落ちていってしまうだろうと。
少なくとも表面が綺麗に金ピカになることはないんじゃないかな。
もしかしてこれって化学の話じゃないんじゃないの!?
ジャービル・イブン=ハイヤーンという伝説的な錬金術師が硫酸、塩酸、硝酸、王水を発明したとされています。
そう、ルークがやっていたのはおそらくある種の錬金術なんですね。
実際、金メッキの技術も錬金術の成果の一つだそうです。(無論、ルークの方法とは全く違います。)
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