【読書感想文】たった一人の熱狂 見城徹

骨 太 度:★×0
出典明示度:★×0
読みやすさ:★★★★
総合 評価:★×4

 手にとったキッカケは堀元見のビジネス書100冊企画で評価が比較的高かったのと、なんか名前見覚えあるなと思って調べたら覚醒剤で逮捕されて満身創痍の尾崎豊を復活させた凄腕編集者だったから。
 堀元見も尾崎豊もキッカケではあるけど、結局の所ブックオフで100円で売られてたから買ったんだけどね。

 他のこの手の本と違って幻冬舎の設立は望んで行ったものではないから、起業しよう!みたいなのがなくてめっちゃいい。見城徹は新卒で入った広済堂を辞めて、角川書店でアルバイトを経て編集者として雑用から始め、最終的には41歳にして角川の取締役にまで成り上がった。だが取締役に就任してから二年も立たないうちに、師と仰ぐ社長の角川春樹が麻薬取締法違反で逮捕され解任に追い込まれてしまった。角川春樹に筋を通すために見城も共に角川書店を去り、編集業を続けるために設立したのが幻冬舎である。

 情熱的だがネガティブな人物で、

早朝には永遠が見えるとすら思う。しかし、「今日もまた1日死へ近づくのだ」という冷徹な事実を確認し、「悔いのない1日にするぞ」と奮い立ち、朝という鳥羽口から残りの人生を照射するのだ。

みたいなことが書いてある... ネガティブなだけの文もあり、

僕にとって、1日の終わりは毎日が後悔だ。何もかも自分の思い通りになった日など、これまで1日としてない。

ということも書いてある。

 編集者だけあって内容はともかく文章にはパワーがある。この本の見城徹の言葉で一番刺さったのはこれかな。

感想を伝えるということに無頓着な人とは僕は付き合えない。感想を伝えることは、人間関係の最初の一歩だ。感想を言わなければ、初対面から始まった人間関係が滋味深いものへと発展することはない。

 泣いたよね。なぜ俺はこんなことすらできないのだろう。なぜ小学生の時に先生はこれを教えてくれなかったのだろう。保育園から人生やり直したい。あととりあえず見城徹に会ったらまず「たった一人の熱狂」めっちゃ面白いっすねって言わないと...

 ただ赤軍派テロリズムを結構堂々と支持しているのは許せない。テルアビブ空港乱射事件を境に、学生運動という革命ごっこの活動を辞めたと書かれているが、無差別テロで革命が成功した試しがない以上、テロリズムすらも革命ごっこにすぎないのではないか。(←追記: これコードギアスでも同じこと言ってた)この場合における死の覚悟は本当にすごいのだろうか。失うものがない人にとって(自殺率を考えても)自死を選ぶことはそんなに難しくないだろうし、そのような人の死の覚悟に対して畏敬の念を抱くのはおかしいと思う。

 閑話休題、でも実はこの本で一番おもしろいと思ったのは見城徹の言葉ではなく、最後についてる秋元康の解説なんだよね。

書き言葉にするより、話し口調のままの方がいいんじゃないかな。つまり”見城徹”っていう人は「語りたくなる人」だと思うんですよね。… ということは、やっぱり”見城徹”という人が精力的に”生きている”ということなんだよ。これがすごく大事で、なかなか人の話題に上がらない人っていうのは、イメージだったり、行動だったり、生きているというものが止まっていて…

 語りたくなる人、いいね。目指したいね!

太陽が燃えなくなったら太陽じゃないように、熱狂しなくなったら人間じゃないし、生きている意味がないんだよね。… だけど僕なんかは、仕事でもなんでも「まぁいっか」「これくらいでいいかな」って思っちゃう。

 表現的確すぎるだろ。

僕も含めて多くの人は、都合の悪いことや面倒なことは忘れようとする、あるいはなかったことにする、あるいは論点を変えて、傷つかないように真実の刃を躱す。

 表現かっこよすぎるだろ。これから言い訳しちゃった時は、「つい真実の刃を躱しちゃった」って言おう。避けないほうがおかしい気すらするし。

 正直あんまりイメージ良くなかったけど一気に秋元康に興味出てきた。

引用したい文・レトリカルな表現

p.27 「なぜそこまで仕事に熱狂できるのか」とよく聞かれる。僕の場合は、死の虚しさを紛らわせるために他ならない。

p.53 作家には本物もいれば偽物もいる。内面に巣食う暗澹たる魔物を、直截的に描く。あるいは、自分の身の底に魔物が棲むことを読者に予感させながら、美しい水面でさざ波がきらめくかのように心の襞を描き切る。本物の作家がいる一方で、魔物や異端を偽造し無頼を気取る作家もいる。自分は所詮偽装してしか書いていないのだ。

p.59 大衆は愚かではない。大衆の支持によって数字を弾き出すコンテンツは、おしなべて優れているのだ。愚かなのは、数字を曖昧にして自分の敗北を認めない表現者や出版社の方なのである。

p.63 「あなたの一番のセールスポイントは何ですか」と問われれば、僕は「自己嫌悪です」と答える。自分が駄目になっていることを自覚できない人間は駄目だと思っている。

p.68 二次会でカラオケに繰り出すなど愚の骨頂だ。時間の無駄でしかない。カラオケがガンガン流れているところでは重要な話なんてできないし、お互いに自己満足な歌を歌い合って2時間も過ごすなど、時間がもったいなくてかなわない。

これ滅茶苦茶笑った。カラオケの誘い断る時に言ってみたい。笑

p.89 会議に要する時間を計算してみるといい。1時間の会議に10人が出席していれば延べ10時間、その会議を3回くり返せば延べ30時間だ。これだけの時間を集中して仕事をすれば、どれだけの成果を上げられることか

普通に説得力あるよね。クリシェっぽいけど。

p.114 「癒着」と「人脈」は似て非なるものだ。僕は「人脈」という言葉を聞くと虫唾が走る。…大勢の人間が集まる場で名刺を渡し、通り一遍の薄っぺらい世間話をしたところで、癒着と言えるまでの濃密な関係を築けるわけがない。

p.133 仕事ができない人間には決まって共通点がある。小さなことや、片隅の人を大事にしないことだ。そんな人間に大きな仕事ができるわけがない。

p.143 任侠の世界に「安目を売らない」という言葉がある。下手に出る必要のない場面でへりくだり、相手に借りを作る。それが弱みとなり、相手を優位に立たせてしまう。

p.185 これから起業するという時に「人のために貢献したい」と平気で言う人は、いつまでもそういうことを言っていればいいと思う。

これも滅茶苦茶笑った。別にいいだろ。笑

p.242 サイバーエージェントの社員はすさまじい情熱に燃えている。驚いたことに、彼らは誰に指示されるでもなく自主的に「先送り撲滅会議」を開いているのだ。先送りこそビジネスの最大の敵だ。

p.270 麻雀を考えた人は天才だと思う。まるで神様が考えて作ったかのようだ。麻雀くらいよくできたゲームはない。

過言

p.321 “見城徹”に他人事はない。全部自分事なんだよ。”見城徹”はやっぱり作家なんだって。すべて主観で、客観性がないんだよ。こどもは客観性がないから自分で物を見るでしょ。でも歳を重ねるごとに、客観的になっていく。自分が主役じゃなくなっていくわけ。だから老人は、すごくいい人になっていく。それで、熱くならなくなるわけ。

そう俺もこどもだ!でも他人事ばかりだからたちが悪いけどね。

(終)