ジャンププラスで人気連載中の漫画『ハイパーインフレーション』作:住吉九 について考察を進めると、この漫画の本当の面白さについて気付いている人は私だけかもしれない、と思ったので記事にまとめようと思います。
[1話]ハイパーインフレーション - 住吉九 | 少年ジャンプ+
しかし、ストーリーの謎や伏線を考察したり、今後の展開を予想したりすることは一切いたしません。
それでも、このシリーズの考察と解説を読めば
『ハイフレ』が100倍面白くなる
こと間違いなしです。
なぜリアリティがあるのか
さて、この漫画がなぜリアリティがあり、こうも面白いのか?ただのファンタジー漫画やシュールギャグ漫画ではないことはお分かりいただけているでしょう。
実は、この漫画の元ネタのほとんどは経済学や歴史に基づいていて…
…例えば、奴隷商人グレシャムはトーマス・グレシャムという16世紀に活躍したイギリスの貿易商が元ネタ!
しかも、「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則を発見した人物なんです!
すなわちそれが、
グレシャムが試金石でルークの贋金を暴いた時のセリフ
「贋金づくり –
それは通貨に対する最大の禁忌 経済を混乱させ大国すら傾ける」
に現れているんですね。
どうです、面白くないですか??
つまり、この漫画の知識や描写には嘘やハッタリが少なく、インテリジェンスに富む面白さがあるということです。
先走ると、1話の1ページ目をとっても普通の人は知らないようなものが映っていたりするのですが、このシリーズの初回では手始めに復習も兼ねてキャラや国の名前(固有名詞)の元ネタを考察していきます。
元ネタの知識はおよそネットで調べただけのものなので、あくまで私の妄想ということで、読んでいただけると幸いです。
考察をくらえェ!!
お前が落ち着けルーク!!
キャラクターの名前
とりあえず、キャラクターの名前から元ネタを考察していきますよ。
ルーク(主人公)
- 映画『スターウォーズ』の主人公ルーク・スカイウォーカーから?
ハル(ルークの姉)
この二人は全く歴史と関係ないんですが、ルークは帝国と戦う救世主、ハルは機械(にされているかもしれない)という類似性と、どちらもSF作品であるということからインスパイアされているのではと考えました。
フラペコ(グレシャムの手下)
- 地動説で有名なコペルニクスから?
グレシャムの法則はトーマス・グレシャム以前に、コペルニクスが本に記していたそうなんです。フラの部分が謎ですが…
レジャット(帝国のスパイ)
- 小説『贋金つくり』の著者アンドレ・ジッドから?
ダウー(巨体の女)
- ダウ平均株価などで知られるダウ・ジョーンズから?
ダウ・ジョーンズの設立は1882年なので、時代考証(次回説明)との年代が近いので、もしかしたら本編に関係するかもしれませんね。
国の名前
登場キャラクターに名前が出てこないことが多いので、まだこの程度… それにグレシャム以外はストーリーに関係してないですね。
しかし!あと二つ、名前がつけられた重要なワードがあります。それは
- ヴィクトニア帝国
- ガブール神(ガブール人)
の二つです!
ヴィクトニア帝国のそもそもの元ネタはイギリス帝国であることは結構な人が気付いていると思います。島国でありながら世界中に植民地を持ち、アヘンと武器と奴隷を売った帝国なんて歴史上一つしかないです(笑)。
本題の名前の方はその植民地化を進めて、最もイギリス帝国が大きかった時代の女王、ヴィクトリアからですね。分かりやすい!
一方でガブール神の元ネタは分かりにくいのですが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の大天使、ガブリエルからだと考えています。
理由は少し長いですが、三つあって
- 受胎告知
新約聖書には、聖母マリアが処女のままキリストを受胎する際にガブリエルが神から使わされて、それを伝えたという話があります。
ルークはガブール神の啓示を受けて生殖能力を失う代わりに贋金を出せるようになったのですから、少し近いものがあるんじゃないでしょうか。
はい、こじつけ感満載ですね。次にいきましょう。
- ガブール人の髪型
ガブール人であるルークやハル、ルークの父親、レジャットさんまで、皆、もみあげを三つ編みにしています。実はこれ、ユダヤ人の髪型らしいです(ガブリエルはユダヤ教の天使)。これが一番理由としてはしっくりきます。
- マケドニア紙幣
最後、突然、マケドニア紙幣ってなんのこっちゃ?ってなりますよね(笑)
順に解説していきます。
ルークが出したヴィクトニア帝国の紙幣、一万ベルク札には天使と柱の絵が印刷されています。
柱は一旦置いておくとして、天使の印刷された紙幣って珍しいと思いませんか?
そこで、調べてみたところ、イギリスの紙幣ではかつて矛と盾を持つブリタニアという女神が描かれていたのですが、翼の生えた女性が描かれたことはなかったのです。
しかし、ギリシャの北側に隣接する北マケドニアの現在の紙幣に、ガブリエルの姿があったんです。
つまり、一万ベルク札の天使はガブリエルってこと!?…と、思うじゃないですか。でも、違うんです。一万ベルク札の天使は、実は天使じゃなくてローマ神話の女神、ヴィクトリアなんです。
その証拠によく見ると左手に月桂冠を持っています。ギリシャ神話のニケに相当するヴィクトリアは勝利の女神で、翼と月桂冠と共に描かれることが多いのです。
ここで、柱に目を移してみます。この柱、なんだかギリシャ風な感じがしませんか?
そこで調べてみたところ、柱頭の装飾がコリント式という古代ギリシャおよび古代ローマの柱の様式そのものだったのです。
つまり、ヴィクトニア帝国はイギリス帝国が元ネタではあるものの、帝国主義の始まりとなったマケドニア王国や古代ローマ帝国のオマージュでもあったということですね。
さて現代のマケドニア紙幣に話を戻すと、ギリシャ神話(ヴィクトリア)→ガブリエルに移り変わっている、と言えます。
そう考えると、ルークがガブール神から出した贋金がヴィクトニア紙幣を駆逐する、という『ハイフレ』の根幹の話と繋がっている気がしませんか…?(深読みしすぎたかも(笑)
俺に競り勝ちたきゃ
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